吉備の中山は,昭和30年代までは下草も刈られ手入れの行き届いたアカマツの林でした。その頃の林床には,アセビやコバノミツバツツジなどの花も咲いていました。その後,各家庭にプロパンガスが普及するようになり,松葉掻きも行われなくなりますと,下草がおごり急速に風通しが悪くなり,マツクイムシの被害が出始め,アカマツ(図1)は,かなり枯れてしまいました。今ではアカマツは神道山の黒住教本部付近や茶臼山古墳などに僅かばかり残っています。アセビはほとんど枯れ,コバノミツバツツジは僅か観察できます。
現在の吉備の中山の全体としては,ブナ科のアベマキ(図2)とコナラ(図3)が優勢な樹種です。このアベマキやコナラの林の中にかなりのヤマザクラやクスノキが生えており,場所によっては,カクレミノ,ネジキ,ナナミノキ,ノグルミ,ダイオウショウなどが生えています。
岡山市の保存樹として,八徳寺のヤマザクラ,尾上の八幡宮のクスノキ(図4),吉備津彦神社にはスギ(図5),モミ(図6)およびムクロジ(図7),さらに,吉備津神社ではイチョウ(図8)が指定されています。この他に,保存樹に指定されていないが特筆するものに,徳寿寺と真如院のナツツバキ(シャラノキ),吉備津彦神社のイスノキやクロマツ,福田海のムクノキ,吉備津神社のケヤキやクロマツなどがあります。
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